楽園追放−Expelled from Paradise−

この映画は、一見すると普通のアニメの様に見えますが、実際にはフル3Dアニメーションです。
それを、トゥーンレンダリングという技術を使い、二次元風に加工したものです。
ディズニーが自然に見える3D表現を目指すなら、この技術はその真逆って感じですかね。

Podcast そこあにで、スタッフへのインタビューを行っていましたが、その話によると、この技術は今後一年は更新されないであろう、最高水準の技術の様ですね。
私は予備知識がある状態で見に行き、注意してみていたのでフル3D作品として観ましたが、予備知識が無い状態で見に行ったら、普通のアニメとしてそんなに違和感なく観れたと思います。
それぐらい技術が凄いです。

これを読んでいるの中には、なんでフル3Dで作ったものをわざわざ2次元化するんだと思われる方も居らっしゃるかもしれません。
個人的な考えを書くと、リアル方向の3D表現には、限界があるからでしょう。
手間暇をかけてリアルに作り込めば作り込む程、表現はより現実に近づいていき、最終的に現実と見間違う様な物を創ることも可能です。
しかしそうなれば、『じゃぁ、実車で良いでしょ』って事になってしまうんですよね。

丁度、写真が発明された当時の画家の様な感じですかね。
リアルに観たものを書くだけなら、写真の方が正確で早くて良い。
画家であり続ける為には、写真で出来ない表現をしなくてはならない…そうして生まれたのが、印象派であり、近代芸術なんですよね。
CGも同じで、技術を磨いて手間をかけた結果が実写と変わらないのであれば、手間をかける意味が無い。
CGで作るのであれば、CGでしか出来ない事を表現しなければなりません。

そういった意味では、3Dで作ったものを、陰影を変えて2Dアニメの様に変えるというのは、結構可能性が広がりますよね。
というのも、2Dの様に見えるという事は、その画像の上に2D画像を乗せても違和感が無いという事です。
例えば、アナと雪の女王で、主役の顔だけが急に2Dアニメになったら、かなり不自然ですよね。
しかし、この楽園追放の場合は、主人公の顔を1シーンの数秒間だけ2Dで描画しても不自然ではない。
つまり、2Dと3Dの自然な融合が可能になるんですよ。

具体的には、アニメ表現だと感極まった時に、顔が不自然な程変化する作画崩壊的な事を意図的にしたりします。
その部分を、2D表現にすり替える事が可能になったりと、表現の幅が広がります。

続いてストーリーですが、SFとしては良くある展開で、特に捻りがある訳では無く、解りやすくシンプルなものです。
個人的には、主人公たちが自由や幸せについて語るシーン以外は、『お!』と思う様な部分は正直ありませんでした。

ですが、この映画は、そもそもが技術の凄さを全面に押し出して披露する為の作品だと思われます。
この場合、ストーリーの方が変に入り組んでいて難しい場合、技術では無くストーリーの方に目が行ってしまう為、作者としては観て欲しい部分を見てもらえない。
その為、敢えてシンプルで分かり易い話にしたんじゃないかと。
私自身も実際に観ていて、ストーリーを楽しみながらも、映像の細かい部分まで観て楽しむ事が出来ました。

こういう観点から観ると、冒頭部分の電脳戦や、後半部分のバトルシーンの大部分が、かつて観たシーン。
特に後半のバトルパートは、SFロボット物の、お約束的なシーンの連続。
板野サーカスは勿論ですが、ロボット同士の先頭でドラゴンボール的な動きをしたりと、かなりテンポよくいろんな要素を入れれるだけ入れたという感じになっています。
そんなお約束のシーンを、フル3D・トゥーンレンダリングの最新技術を使って表現するとどうなるのか?という感じですかね。
今までの技術との違いを解り易く比較する為の演出なんでしょうね、技術の凄さを魅せつけられた感が凄いです。

これを観た後、今後のアニメの作り方が根本的に変わるんじゃないかなと思ってしまいました。

今は3Dスキャナーとかもありますし、3Dモデルをモーションキャプチャーで動かす事もそんなに難しいことではありません。
この技術が更に進み、服や髪の揺れ等も自動演算でお手軽に出来れば、近い将来、今以上に安価で低予算でハイクオリティなアニメが量産されるって日も来るかもしれませんね。
思わず、そんな未来を想像してしまうような作品でした。

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